マグミクス | manga * anime * game

『サイボーグ009』最終回はどうなった? 「マンガ史上最高」と「賛否分かれる」2つのエピソード

流れ星に祈りを捧げた少女の存在

「天使編」が描かれる文庫版コミックス『サイボ-グ009』23巻(秋田書店)
「天使編」が描かれる文庫版コミックス『サイボ-グ009』23巻(秋田書店)

 ジョーとジェットのふたりが抱き合い、夜空を駆け抜ける流れ星になるという、あまりにも美しく、そして哀しいエンディングでした。当時は「BL」という言葉はありませんでしたが、固い友情で結ばれた009と002の最期は、読者に強烈なインパクトを与えました。

 この最終話のプロットは、米国のSF作家レイ・ブラッドベリが1951年に刊行した短編集『刺青の男』の一編『万華鏡』からの影響が指摘されています。『万華鏡』は宇宙ロケットが爆発を起こし、搭乗員たちが宇宙空間に放り出され、そのなかのひとりが地球へ落ちていくまでを描いたものです。

 SF小説を愛読していた石ノ森氏は、間違いなく『万華鏡』を読んでいたでしょう。しかし、『万華鏡』はひとりで地球に落ちていくのに対し、『サイボーグ009』は信頼しあう男たちがふたりで落ちていくという違いがあります。

 その流れ星を地上で見つけ、「世界に戦争がなくなりますように」と願う少女の姿が最後のページに描かれています。幼い弟を連れたその少女は、石ノ森氏の姉である小野寺由恵さんがモデルだと思われます。石ノ森氏の最大の理解者であり、22歳という若さで亡くなったお姉さんをモデルにして、石ノ森氏が世界平和を願ったエピソードでもあったようです。

未完のままとなった「天使編」「神々との闘い編」

 感動的な最終回を飾った『サイボーグ009』でしたが、009が002と殉死するという結末は大反響を呼び、編集部や石ノ森氏の自宅には抗議や助命嘆願が殺到したそうです。そのため石ノ森氏はわずか2か月後に、月刊誌「冒険王」(秋田書店)で『サイボーグ009』の連載を再開することになりました。

 復活した009たちは、やがて「ブラック・ゴースト」以上の強敵と戦うことになります。美しい天使の姿をした「神々」が、最強にして最後の敵でした。

 壮大なスケールの物語が展開される「天使編」でしたが、本格的な戦いを前にして001が他の仲間たちに「新しい力をつけてあげる」と伝えるところで連載は中断されました。その後、「天使編」を受け継いだ「神々との闘い編」も、未完のまま終わっています。

 1998年1月に、石ノ森氏は60歳で亡くなりました。石ノ森氏が病床で伝えた『サイボーグ009』のクライマックスの構想は、長男の小野寺丈氏によって小説化され、元アシスタントたちによってコミック化もされています。しかし、やはり石ノ森氏本人の気力と体力が充実していた時期に、『サイボーグ009』の完結編が執筆されていれば……と思ってしまいます。

 001が009たちに与えた「新しい力」とは何だったのか? 時折、そのことを考えます。009が「あとは、勇気だけだ!!」という名ゼリフを口にした「ミュートス・サイボーグ編」や、観念的な世界が描かれた「神々との闘い編」を読む限り、単に009たちの能力をそれぞれパワーアップしたものではないように思うのです。

 世界から戦争がなくなることを、流れ星に祈ったあの少女の無垢(むく)な願いにこそ、そのヒントがあるのではないでしょうか。『サイボーグ009』の真の完結は、争いが絶えない現代社会を生きる私たち読者の心のなかに委ねられているのかもしれません。

(長野辰次)

【どの時代が好み?】え、絵柄全然違う! これが各時代にアニメ化された『サイボーグ009』のビジュアルです(5枚)

画像ギャラリー

1 2

長野辰次関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

マンガ最新記事

マンガの記事をもっと見る