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震災後、日本のために立ち上がったウルトラマンと仮面ライダー。2作品が見せた希望の光

絶対にあきらめないことを訴え続けた、ウルトラマン

『ウルトラマンサーガ』Blu-ray(バンダイビジュアル)
『ウルトラマンサーガ』Blu-ray(バンダイビジュアル)

 震災後の日本を元気づけるために立ち上がったもうひとつの作品が、2012年3月に上映された『ウルトラマンサーガ』です。DAIGOさんがウルトラマンゼロに変身するタイガ・ノゾム役で主演、AKB48の中の7人がウルトラシリーズ初の女性だけの防衛チームの隊員役を演じることで注目を集めた作品でした。

 バット星人はウルトラマンが存在しない世界の地球を侵略し、ほとんどの人間と生命体を消失させる。残された7人の女性は防衛チームとして9人の子供たちを守っていた。そこへ別々の世界から3人のウルトラマンがやって来る……というのが序盤の展開です。

 実は、本作は震災の影響を考えて中止を検討されていました。しかし復興に向き合うため、製作することが決定したという経緯があります。そのため、最初は破壊されて荒廃した世界を舞台にするところを、人が消えてしまった無人の街に変更されました。

 本作での絶望的な状況は、まさしく震災直後を思い出させるに十分な演出です。そこからの逆転劇が本作の見どころ。この物語で元気を出してもらいたいという製作者側の意図でしょう。そんな気持ちが感じ取れました。

 何度も危機的な状況が襲ってきますが、そのたびエールのように劇中の誰かが暖かい言葉で励ましてくれます。それは作中の人物だけでなく、見ている人たちに贈られている。そう感じる強いものでした。

「あきらめなければまだ終わりではない」この物語にはそんなテーマが秘められていました。

 そして、最後にはいなくなった人たちが無事に帰ってきて、子供たちとの再会を果たします。人によって意見はさまざまだと思いますが、ご都合主義と言われてもハッピーエンドに優る大団円はない。そう思わせるこの展開がヒーローものの良さだと筆者は思います。

 そして、最後の最後に地球を去っていくゼロが振り返った時にクローズアップされた光景こそが、この作品が誰に向けて作られていたのかわかるシーンでした。まだ見たことのない人のために、ここだけは伏せておきます。

 本作のキャッチコピーのひとつは「僕らにはまだ、輝く希望がある!!」ですが、その言葉通り、「あきらめないこと」こそが、追い詰められた状況を打破する力になるのでしょう。

 震災後の絶望的な状況に対するアンサーとして生まれたふたつの映画。子供向けだと言われても、この映画で当時、心を救われた人がいたことは確かだと思います。

(加々美利治)

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