ウルトラ怪獣の人気者「ゴモラ」…変遷の果ての「大出世」で、人類の味方に?
21世紀になり一躍脚光を浴びるゴモラ

ゴモラに起こった意外な出来事。それは、作品の主役に抜擢されたことでした。
排出されたカードで遊ぶことのできる「アーケードカードゲーム」が流行した際、ウルトラ怪獣を使った『大怪獣バトル ULTRA MONSTERS』という筐体がリリースされます。このシリーズの中心に設定された怪獣がゴモラでした。
そして、このゲームが人気となると、テレビで『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(2007年)という作品がスタートします。ゴモラの立ち位置は主人公レイの相棒ともいえる怪獣で、実質的な主役として他の怪獣たちと戦いました。
この時、ゴモラに新たな能力が加わります。それが、角から発生させる「超振動波」。もともとゴモラの角は地中を潜る時に振動するから、素早く地面を削除できる……という考察もあったので、新たに加わったというよりも新解釈という位置づけかもしれません。
さらに強化形態であるEXゴモラ。ブレイブバーストやレイオニックバーストという姿かたちは一緒でも、エフェクトや体色に変化があるバージョンに変身する能力も披露します。
ゴモラにとって幸運だったのは、「大怪獣バトル」の世界観ではウルトラマンが戦わないということ。そのことで、ウルトラ怪獣としては異例の大出世ができたわけです。その結果、ウルトラマンと並び立つ怪獣という立ち位置まで確立しました。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)では、ウルトラマンと一緒に怪獣軍団と戦うという活躍も見せます。
この流れで製作された『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(2010年)では、自分をもとに作られたロボット怪獣「メカゴモラ」も現れ、子供たちとってゴモラはヒーローと同じ存在となりました。
さらに『ウルトラマンX』(2015年)では、ウルトラマンエックスに変身する主人公、大空大地が持っている両親の形見のスパークドールズ(人形になった怪獣)がゴモラでした。作品中、大地とゴモラの心の触れ合いが何度か描かれたほか、エックスの鎧である「ゴモラアーマー」、防衛組織Xioが開発したサイバー怪獣「サイバーゴモラ」など、ゴモラがかなりクローズアップされています。
もちろん、ウルトラマンと敵対するゴモラもいまだに存在していました。しかし、これだけベビーフェイスの時代が長くなると、敵役として憎めなくなるものです。ゴモラが倒されると、むしろ可哀想な気持ちになるのは仕方ありません。思えば初代のゴモラも人間の被害者だったことを考えると、近年のゴモラの扱いには納得できるものを多く感じます。
(加々美利治)