【シャーマンキング30周年への情熱(43)】リゼルグとジャンヌの存在からX-LAWSを読み解く
2021年4月から放送中のTVアニメ『シャーマンキング』第21話。新メンバーリゼルグの戦いや、本命であるジャンヌの存在を通して、これからの展開では切り離せない"正義の集団"X-LAWSを掘り下げて考えます。
リゼルグ敗北の理由は集団心理にあった?
2021年9月2日放送のTVアニメ『シャーマンキング』第21話で、ついにX-LAWSの”象徴”アイアンメイデン・ジャンヌが登場しました。設定では彼女はリーダーやボスではなく、象徴・シンボルとしてトップに据えられた存在とされています。
すでにエンディングテーマは彼女にスポットを当てたものになっていますが、今回見せたのは聖・少・女としての厳しい一面でした。
X-LAWSの本命とも言えるチーム「X-I」の先鋒は、葉と袂を分かってX-LAWSに新加入したリゼルグでした。彼は勝利まであと一歩というところで持霊・モルフィンに協力を拒まれてしまいます。リゼルグが正義の名の下に相手を殺そうとしたからです。
「正義」と「悪」にはさまざまな考え方があります。どんな状況でも絶対に変わらない(絶対正義、絶対悪)という考えもあれば、見る角度によって変わるという考え方もあります。
こうした主張の違いは本作にもあり、X-LAWSは、自分たちは正義の執行者でその指示に従わない者は排除に値する「悪」だと考えているようです。ただこれは彼らの本心ではないと思います。ハオへの憎しみが強すぎるあまり集団心理によって生まれた極端な一面だと筆者は考えています。
集団になると人は論理よりも感情が強まる傾向があるそうです。普段おとなしい人がライブでは大声を出す……などですが、残念ながら暴力的になるケースもあります。X-LAWSはハオに復讐を誓う者同士の集団なので、目的達成を邪魔する者も敵だという極端な考えが生まれるのは理解できないわけではありません。
もちろんメンバーはそれに流されているわけではなく、そういう一面を表に出すことで、ハオに自分たちが脅威であると思わせる意図でしょうが、新人のリゼルグは理解しきれず取り込まれてしまったようです。同志に囲まれる今の立場を失いたくないあまり、表向き彼らが掲げる思想に、心では納得していないのに同調する……リゼルグ自身は冷静だと思っていても、モルフィンには見抜かれていたということでしょう。
これに対してマルコは厳しい評価を下します。マルコの頑固な性格もありますが、あの場ではキツい言い方しかできなかったからでしょう。ハオの前で優しさという隙を見せることは、負けを意味すると考えていたはずです。