マンガ『空手バカ一代』は名言満載。東京五輪に向けて読みたい、昭和の男の一代記
「事実かどうか」を超えて迫ってくる、「生きざま」の真実

たとえば、千葉の海岸で巨牛「雷電号」を倒した「ウシ殺し」のエピソードが、マンガでの描写と実際の映像とでかなり乖離しているほか、北海道でのヒグマとの死闘、実在するかどうか分からない一連の格闘家たち、ヨルダンでのゴリラとの闘いなど、ウソか本当か分からない部分はあるのですが、あえていえばコトの真贋はどうでもよく、「男とは、どう生きるべきか」を昭和の少年たちに教えた『空手バカ一代』という作品の功績の大きさが、語られるべき「真実」として迫ってくるのです。
劇中では「求めて空手バカ」になった大山倍達の、「正義なき力は無能なり! 力なき正義も無能なり!」という言葉や、池袋でのいさかいから殺してしまったヤクザ、仁科の遺族親子に対して「恩を売るとは相手の感謝をアテにしての行為だが、つぐないとはつぐなう相手のにくしみ・いかりに耐えながらの一方的な行い!」という考え、大山道場の弟子たちや親たちに語った「親孝行できない人間はしょせんなんにもできない!! わたしはそう信じている!」など、ここで紹介しきれないほど多くの名言に満ちています。
そのなかでも、
「男は相手の信頼を裏切ったときからブタになる!!」
「人間うわべなどどうでもよい! 要は中身…心さえ王者のほこりと気品をうしなわなければ……」
「日ごろ十の練習をしていてはじめて五を完全に達成できる! 空手にかぎらず人生のこと万事おなじ!!」
というのが、筆者のお気に入りの台詞です。
空手の道は人の道。数多ある「梶原語録」の数々が昭和の少年たちに与えた影響は大きいと思います。時代はすでに平成から令和に移り変わっていますが、東京五輪で「空手」が行われるにあたって、ぜひご一読頂きたい名作が『空手バカ一代』です。
(渡辺まこと)
●【公式】アニメ『空手バカ一代』 第1話「焼けあとに空手は唸った」(1973)