『ウルトラセブン』動かざる敵との戦いにスタッフも苦戦 21話「海底基地を追え」
アイアンロックス VS ウルトラセブン
さて、『ウルトラセブン』に登場した「アイアンロックス」は、全長80メートル・体重15万トンと、最大身長40メートル・体重3万5千トンのセブンと比べるとかなり巨大です。
地球防衛軍の壊滅を目論むミミー星人が海底に沈む戦艦大和を元に様々な軍艦の残骸を寄せ集めて作った怪獣という設定は、まだ太平洋戦争の記憶を色濃く残す時代にあっては、かなりのリアル感があったのではないでしょうか。
作中での「アイアンロックス」は日本近海で漁船を襲撃するのですが、暗い海から突如として現れる軍艦の姿は恐怖感をあおります。まるで幽霊軍艦です。ウルトラ警備隊と戦闘になった「アイアンロックス」はウルトラホーク3号を破壊し戦闘力の高さを見せつけますが、キリヤマ隊長の攻撃により一時機能を停止します。
再起動した「アイアンロックス」は漁村を砲撃し破壊するなど沿岸地域に恐怖を振りまきます。ラストの戦いでは、拘束用チェーンを発射しセブンを捕らえ、至近距離から砲撃を撃ち込むというかなりガチの戦いぶりを見せてセブンを追い詰めます。ここでミミー星人は「アイアンロックス」を自爆させ、とどめを刺そうとしますが、爆発の数秒前、セブンが決死の猛回転でチェーンを振り切り、最後はエメリウム光線で逆転の一撃を決めて「アイアンロックス」は大爆発を起こし破壊されました。ミミー星人もフルハシ、アマギが搭乗する潜水艦、ハイドランジャーのミサイルで倒され、一件落着となりました。
この戦闘での注目点が、動かない「アイアンロックス」に対するセブンの戦い方、苦しみ方です。ウルトラシリーズでは、最後の怪獣とのバトルが最大の見どころですが、動かない相手だと普段やっているような格闘戦では見ごたえがありません。このときのセブンもいろいろ試行錯誤したようで、チェーンに捕らえられたときの水のなかでもだえ苦しんでいるシーンにかなり力が入っています。スーツアクターの上西弘次氏による迫真の演技です。
現場スタッフによる、「動かない相手にどうすれば見栄えのする戦いができるのか」という試行錯誤は、子供のころには見えていなかったものでした。古い作品ではありますが、今改めて見直すことにより、新たな世界が見えてくることもある。それを教えてくれたのが「アイアンロックス」でした。
(早川清一朗)
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