【シャーマンキング30周年への情熱(53)】ルドセブらの復讐劇がもたらした成長とは?
2021年4月から放送中のTVアニメ『シャーマンキング』第37話。チョコラブとルドセブたちのエピソードがひと区切りつきました。これを通じて彼ら自身も精神的な成長を遂げました。それがどういうものだったのかについて解説します。
子供たちに明らかになってしまった、ミュンツァー博士の暗黒面

2021年12月23日放送のTVアニメ『シャーマンキング』第37話。今回でチョコラブとルドセブたちのエピソードにひと区切りがつきました。「やったらやり返される」というテーマが根底に流れるなか、筆者が前回の記事で「生から死への話」と表現したチョコラブへの復讐劇は、死んだチョコラブがグレート・スピリッツ内で精神の成長を遂げて蘇り、彼なりの結論を見せたことで解決しました。
一方、この話の裏にはチョコラブに殺されたルドセブたちの父・カメル・ミュンツァー博士の暗黒面が潜んでいて、親を殺された子供の純粋な怒りだけの問題ではないことが明らかになりました。まずはこの点を掘り下げたいと思います。
ミュンツァー博士は強いロボットなら何でも良いわけではなく、ゴーレムを創ろうとしていました。その理由が36話の「ゴーレムは国を持たない我らを救うべく生まれた人造人間だ」という言葉です。つまり彼はユダヤ民族の血を引いており、だからユダヤ教の伝承に登場する泥人形・ゴーレムを創ろうとしたのです。
歴史的にユダヤの人びとはさまざまな事情で国を追われ放浪などしていたことがあるので、祖先を追い込んだこの世界に恨みを抱いていました。そこでゴーレムを使ってシャーマンキングを目指したというわけです。しかしそこで彼の暗黒面が顔を見せます。「内蔵巫力」の存在です。
内蔵巫力とは、今でいえばモバイルバッテリーです。操縦者であるミュンツァー博士の巫力は大したことがなくても外部から巫力を補えば問題ない……という発想だったわけです。しかし電気と違い巫力は人間が持っているもので分けられません。それをどうやって溜めたのか……。
魂で補うとミュンツァー博士は言っていますが、要するにスピリット・オブ・ファイアと同じです。これがルドセブたちも知らなかった彼の暗黒面です。ミュンツァー博士は子どもたちの良き父親だった反面、目的達成のために手段を選ばない非道な一面を持っていたのでした。
子供ゆえ理屈抜きに「正義と悪」が存在すると思っていたルドセブには、葉から自分の「正義」を否定されただけでなく、父が「悪」だった事実はショックでしょう。筆者も父親なので子供にそう思わせることは切ないのですが、一方でこれが成長でもあるのだと感じます。おやこれは……もしかして幹久視点でしょうか?(笑)