【シャーマンキング30周年への情熱(17)】担当編集者と語り合う、「マンキン」誕生前夜の話
「イケる!」と直感した、作品のアイデア

タシロ いえ、もうひとつ寄り道があります。それが過去の連載記事(第5回)に書いているゲーム会社の話です。当時は受賞前で生活も楽じゃないですから、少しでも収入の足しになるかもと思い、僕が務めていた会社にグラフィッカーで応募することを提案したんです。
Y田 でも先生はそこで社長さんから「ブレずに夢を追え」と諭されたんですよね? つまりそのふたつの出来事があって先生の腹が決まったということですか。
タシロ 人生ってどこにポイントがあるかわからないものですよね……。
Y田 本当ですね……。
Y田 タシロさんにとっても『ITAKOのANNA』は思い入れが深い作品だと思うんですが、当時どんな想いがありましたか?
タシロ 初めてアイデアを聞いたときは率直に「イケる!」と思いました。それまでの反省を全て内包した集大成だと。特に「変身」ではなく「変心」という点に惹かれました。
Y田 あ、もしかしてそれは第5回で濁して書いた「先生の決定的な気づき」の部分ですか? せっかくなので教えてもらえれば……大丈夫ですよ、向こうで先生、普通に仕事してて止める気配もないですし(笑)。
タシロ そうですね(笑)。では――実はそれ以前に武井君がロボットもの(未発表)を執筆したとき、主人公(主体)がパイロットとロボットに分散してしまい、ページ制約のある読み切りでは魅力的に描き辛い……という反省があったんです。そのアンサーだと感じました。
また、架空の世界観は説明が必要なので、やはりページの制約から読み切りに向かないという反省もありつつ、「単なる現代劇は嫌だ」という思いもあったなか、主人公がイタコなら現代劇でもオリジナリティがあり「変心」の設定も合理的。故郷の青森も含まれていて作家の独自性もある。「これでダメなら何が良いんだ?」とすら思いました(笑)。
ですから、受賞したときは我が事のように嬉しかったですよ。あ、今お話したことはもちろん当時の発想ですよ(笑)。
Y田 なるほど。そう考えると『ITAKOのANNA』は先生の原点にして当時の到達点なんですね。先生はロボットものがお好きですが、それは例えばX-LAWSの天使に発揮されているだけではなくて、形を変えてもっと深いところに生かされていたんですね。さらに『シャーマンキング』では連載だからできることが加わって洗練されていると思います。