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【シャーマンキング30周年への情熱(17)】担当編集者と語り合う、「マンキン」誕生前夜の話

『シャーマンキング』連載20周年を記念し、全国巡回中の原画展や2021年の新作アニメなど、さまざまな企画が進められています。作者・武井宏之先生の担当編集であるY田さん、そして本連載の筆者はともに、その20周年企画に深く関わっています。それぞれの武井先生との出会いや、作品の誕生秘話などについて、ふたりで語り合いました。

武井先生と担当編集・Y田さんの出会い

武井宏之先生のデビューにつながる読み切り作品『ITAKOのANNA』
武井宏之先生のデビューにつながる読み切り作品『ITAKOのANNA』

『シャーマンキング』20周年記念の一環として始まった本連載も開始から半年が経ちました。そこで、本連載の筆者・タシロハヤトさんと、講談社「少年マガジンエッジ」編集部で作者・武井宏之先生を担当するY田さんとの対談を前後編に分けてお送りします。

 対談は武井先生の事務所にて、しかも先生自身が仕事をしながら聞いているという状況で行われました。それぞれの武井先生との出会いや『シャーマンキング』誕生の裏話などをはじめ、今回始めて明らかになるお話もあるので、お楽しみください。

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タシロハヤト(以下、タシロ) まずは我々と武井先生君との出会いを紹介しつつ、これまで触れていない話を掘り下げてきたいです。Y田さんからお願いできますか?

編集部Y田さん(以下、Y田) わかりました。私と先生の出会いは「少年マガジンエッジ」の創刊(2015年)前です。当時連載を担当していた漫画家先生が、食事の席でこれから知り合いを呼びたいとおっしゃり、それが武井先生だったと。あまりに意外な大先生との出会いでした(笑)。

タシロ マガジンエッジで『猫ヶ原』の連載が始まりましたよね? その準備などもずっと一緒に?

Y田 はい。私は編集者ですから雑誌をどうやって盛り上げて行くかを考える立場ですが、先生にもこれからの目標があるので、そのあたりを協議した結果が、新創刊したマガジンエッジでの連載でした。

 当時は先生が、人を描くのに少し疲れたとおっしゃっていたので、作品が猫を主人公とした『猫ヶ原』になった経緯はあるものの、ゆくゆくは『シャーマンキング』をどうにかしたいともお考えだったので、私は最初からそこを見据えて取り組んでいたつもりです。

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デビューのきっかけとなった『ITAKOのANNA』誕生まで

 かつて、筆者・タシロハヤトさんと武井先生がものづくりを語り合った日々は、手塚賞佳作を受賞し、武井先生のデビューにつながった作品『ITAKOのANNA』に結実します。『ITAKOのANNA』は、イタコの主人公・恐山アンナが「イタコの口寄せ」で侍の霊を身体に降ろして「変身」ならぬ「変心」をし、本人の動きをトレースして悪党を退治する物語です(「SHAMAN KING 完結版」27巻収録)。

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Y田 では次はタシロさんのお話を。以前の連載記事(第5回)で、武井先生とは高校時代からのご友人で、上京後も一度先生のところに遊びに行ったら1週間は帰らない生活をしていて(笑)、その間に「作品を作る」というテーマで語り合っていたことなどが書かれています。それは先生がデビューするきっかけとなった「ITAKOのANNA」の投稿前ですよね?

タシロ そうですね……僕らには指針になっていた本があって。『サルでも描けるまんが教室』っていう、相原コージ・竹熊健太郎両先生の執筆したマンガです。当時の僕らはその内容に沿ってアイディアを出しては分析していました。

 最初は単に議論をしていただけですが、やがて実際に作る時期が来て、初期には僕がネーム、武井君が作画という合作もありました。それは某ゲーム誌に応募するためのものでしたが、当時彼が師事していた漫画家先生から「君が連載したいのはこの雑誌じゃないでしょ?(意訳)」と諭され、雑誌の規格が特殊だったため、原稿の流用ができずお蔵入りになりました。

Y田 あ、その話は読みました。そういうつながりですね。ではそれ以来、先生は受賞に向けて……?

【画像】『シャーマンキング』につながる重要作!『ITAKOのANNA』『仏ゾーン』の一部内容を見る

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k