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【シャーマンキング30周年への情熱(20)】神回「恐山ル・ヴォワール」の舞台・青森を訪ねる(上)

「元陸軍大将ぐーちゃんの店」には元ネタが…

作中の「元陸軍大将ぐーちゃんの店・土産のぐまくら」と、実際の「くまくら」だった建物
作中の「元陸軍大将ぐーちゃんの店・土産のぐまくら」と、実際の「くまくら」だった建物

●元陸軍大将ぐーちゃんの店・土産のぐまくら

 作中の重要な場面のひとつ「元陸軍大将ぐーちゃんの店・土産のぐまくら」は、店主も葉をサポートする重要な役割を果たします。実際のお店は「くまくら」という名前でした。これは、先ほど紹介した横迎町からほど近い、柳町にあります。

「元陸軍大将ぐーちゃんの店」というのは随分意味ありげな言い回しですが、これには元ネタがあります。青森ローカルに「陸軍大将たーちゃんのお店」という仏具屋のテレビCMがあり、特にアニメなどを放映していた夕方の時間帯にはよく目にしていました。完全に頭に刷り込まれたお馴染みのフレーズだったので、初めて「ぐーちゃん」の言葉を目にした時はニヤニヤしてしまったのを憶えています。

 さて、現在のくまくらさんですが、建物は残っているものの営業はしていません。この道を進んでいくと、当時は大畑(おおはた)線の田名部(たなぶ)駅という駅がありました。むつ市街はそれを起点に活気が広がっていた側面もあったのですが、大畑線の廃止に伴う駅の閉鎖で人の流れが変化し、閉店ということになったようです。しかしよく見ると、何故か「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターが貼り出されたりしています。このお土産屋さんに一体何があったのでしょうか?

 実はここ、劇中に描かれた翌年の2003年に妖怪ハウスとして生まれ変わっていたのです! というのも、故・水木しげる先生が初代会長を務めた世界妖怪協会が主催する「世界妖怪会議」というものがあり、当時は妖怪に縁のある日本各地を持ち回りで毎年開催されていました。

 そして2003年には「下北妖怪夏祭り」と称してむつ市で行われたのです。その時にここを妖怪ハウスとして改装、様々な展示品を置いて解放し、随分と賑わったようです。それらを牽引したのがお店の向かいにある旅館のオーナーさんで、一部ではずいぶん有名な方のようなので、興味のある方は調べてみてください。

●「それじゃ全然わかんねえ!」の場面

土産屋から去っていくアンナに、葉が叫ぶシーン。旧・田名部駅から延びる道路が背景か?
土産屋から去っていくアンナに、葉が叫ぶシーン。旧・田名部駅から延びる道路が背景か?

 さて一方、お店に向かって左側を向いた景色が、「ぐまくら」で再び出会ったアンナからの言葉に、葉が「それじゃ全然わかんねえ!」と叫ぶ場面の背景と思われます。

 ここは田名部駅から延びる道路ですが、松木屋(まつきや)の看板が目立ちます。松木屋とは昔から青森にある百貨店で、年配の方にとっては伊勢丹や三越のような存在だったといっても良いでしょう。お中元やお歳暮、ちょっとしたお土産などは松木屋の包装紙に包まれていることがステータスでした。本店だった青森市の松木屋はもう存在しませんが、むつ市では現在も元気に営業中です。

「恐山ル・ヴォワール」の舞台を訪ねる旅はまだまだ続きます。次回は、物語が大きく盛り上がる、恐山を訪れます。お楽しみに!

(タシロハヤト)

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※掲載写真は、注記がないものは全て筆者撮影、過去の現地写真について、次の提供元のご協力をいただいています。

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・光鉄企画
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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k