『鬼滅の刃』善逸の兄弟子・獪岳の過去と最期 なぜ上弦の鬼に?「アンタはクズだ」
吾峠呼世晴先生による漫画(マンガ)『鬼滅の刃(きめつのやいば)』(ジャンプコミックス/集英社)に登場する、獪岳(かいがく)について解説します。獪岳は善逸が「爺ちゃん」と呼ぶ元鳴柱・桑島慈悟郎の弟子です。
- ネタばれ注意
『鬼滅の刃』獪岳とは
獪岳は、『鬼滅の刃』原作漫画第4巻第34話「強靱な刃」で初登場した善逸の兄弟子です。元鳴柱(なりばしら)・桑島慈悟郎(くわじま・じごろう)のもとで鬼殺隊に入隊するための修行をしていました。
本編では、那田蜘蛛山で蜘蛛の毒を受け、死にかけていた善逸の回想で初登場。獪岳は桃を食べながら善逸に「消えろよ」と罵ります。獪岳にとって、後から弟子になった善逸は邪魔でした。善逸は朝から晩まで泣き、よく逃げ出そうとします。そのたびに師匠が捕まえに行きます。そんな善逸を見ていた獪岳は、師匠の時間が無駄になっていると考えていました。「那田蜘蛛山編」での回想シーンの獪岳の顔は、まだ伏せられています。
原作漫画では名前が判明するまで、ファンの間では「桃先輩」というあだ名で呼ばれていました。
獪岳の声優は?
アニメ『鬼滅の刃』で獪岳の声を担当する、声優の細谷佳正(ほそや・よしまさ)さんは、1982年2月に広島県で生まれました。2002年に東京アナウンス学院を卒業後、芸能事務所「マウスプロモーション」に附属する俳優養成所に入り、2006年に同事務所に所属しています。
ブレイクした作品はアニメ『テニスの王子様』の白石蔵ノ介役。以降、『進撃の巨人』のライナー・ブラウン役や、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ・イツカ役をなど演じ人気を高めました。
また吹き替えでも活躍。ディズニー映画『ムーラン』に出演した俳優ヨソン・アンの吹き替えを担当しています。
2012年にはラジオ番組『細谷佳正・増田俊樹の全力男子』をきっかけに、声優の増田俊樹さんとユニット「MaxBoys」を組んで歌手デビュー。シングル「大切なもの」をリリースしています。
「第8回声優アワード」助演男優賞を受賞した2014年には、事務所から独立しました。また、「第10回声優アワード」でも助演男優賞に輝いています。
獪岳の過去、悲鳴嶼行冥との関係
獪岳は、家すらなく泥をすすって暮らしていたところを悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)に引き取られました。当時、悲鳴嶼は孤児たちとともに、寺で暮らしていました。
ある日、獪岳は金を盗み、他の子供たちと揉めて外に出ます。そこで鬼に遭遇してしまいます。獪岳は、自分が助かりたいがために鬼に協力することに。悲鳴嶼が焚いていた藤の花の香炉を消し、鬼を招き入れました。子供たちは次々と喰い殺されてしまいます。追い詰められた悲鳴嶼は鬼を殴り殺します。ひとり生き残った幼女・沙代 (さよ)が、鬼のことをうまく伝えることができず、悲鳴嶼は殺人犯として投獄され、処刑を待つ身となります。この事件がきっかけで、悲鳴嶼は親方様に救われ、鬼殺隊に入ることになります。
一方、その後の獪岳は桑島に弟子入りして、善逸とともに「雷の呼吸」を学びます。善逸は「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃(いちのかた へきれきいっせん)」しか使えませんでしたが、獪岳は逆に「壱ノ型」ができず、他の型を身につけています。桑島はそんなふたりを合わせて「雷の呼吸」の継承者としました。
『鬼滅の刃』雷の呼吸の技・型一覧 色恋に激情的な者が得意?
「雷の呼吸(かみなりのこきゅう)」とは、鬼殺隊士が用いる呼吸法。元鳴柱・桑島慈悟郎の継子である我妻善逸、獪岳が習得しています。炎、風、岩、雷、水の基本の5つの呼吸のひとつ。型は陸ノ型まであり、我妻善逸は独自に「雷の呼吸 漆ノ型 火雷神」を会得しています。
アニメ「柱稽古編」で描かれた幼少期の獪岳
TVアニメ「柱稽古編」第7話で、悲鳴嶼の過去が描かれました。寺の子供たち全員の姿も描かれ、幼少期の獪岳の姿もありました。作中では明確に「獪岳」「善逸の兄弟子」との描写はなく、EDクレジットも「寺の子どもたち」として声優の細谷佳正さんの名前がありました。
柱稽古編7話でファン歓喜!『鬼滅』でやらかしまくって「最低」だけど人気な鬼とは
『鬼滅の刃』には、出番は短いものの、終盤に一気に人気を高めた鬼がいます。実は人間時代にもあることをやらかしていた彼は、『鬼滅の刃 柱稽古編』の7話で、特に話題になっています。
獪岳と善逸、獪岳の最期
鬼殺隊の一員となった獪岳は鬼と戦ううち、上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)に遭遇してしまいます。命の危機を感じた獪岳は黒死牟に土下座します。
圧倒的強者に跪くことは恥じゃない
生きてさえいれば何とかなる
死ぬまでは負けじゃない
そう考えた獪岳は、黒死牟に鬼になりたいと願います。そして黒死牟から血を与えられ、鬼に変化しました。さらに、空席となっていた上弦の陸の座につきます。
「雷の呼吸」の継承者である獪岳が鬼になった責任をとって、桑島は切腹。桑島の切腹を知った善逸は、無限城で獪岳と遭遇します。
「適当な穴埋めで上弦の下っぱに入れたのが随分嬉しいようだな」
痛烈な挑発をした善逸は続けます。
「何で鬼になんかなってんだ?」
鬼になった理由を尋ねられた獪岳は答えます。
「俺は俺を評価しない奴なんぞ相手にしない
俺は常に!!
どんな時も!!
正しく俺を評価する者につく」
さらに獪岳は善逸を「カス」、桑島を「耄碌(もうろく)した」とあざけり、激怒した善逸に言い返されます。
「俺がカスならアンタはクズだ
壱ノ型しか使えない俺と壱ノ型だけ使えないアンタ
後継に恵まれなかった爺ちゃんが気の毒でならねぇよ」「テメェと俺を 一緒にすんじゃねぇ!!!」
獪岳は「雷の呼吸 肆ノ型 遠雷(しのかた えんらい)」で斬りかかります。鬼になった獪岳の攻撃は黒い雷のようなエフェクトのある激しさでしたが、善逸にはあっさりとかわされます。
さらに獪岳は「雷の呼吸 弐ノ型 稲魂(にのかた いなだま)」で攻撃。一瞬で5回も斬撃を入れた実力に、善逸は獪岳が大量の人を喰ったと悟ります。
「もう善悪の区別もつかなくなったんだな?」
善逸に言われた獪岳は「善悪の区別はついてるぜ!!」と返します。そのまま「雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷(さんのかた しゅうぶんせいらい)」で善逸に斬りかかりながら言い放ちます。
「俺を正しく評価し認める者は“善”!!
低く評価し認めない者が“悪”だ!!」
獪岳の言う「正しい評価」とは、獪岳にとって都合のいい評価に過ぎません。さらに獪岳は「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷(ごのかた ねっかいらい)」を放ちます。
「どうだ!?
血鬼術で強化された 俺の刀の斬れ味は
皮膚を!! 肉を!! 罅割って焼く斬撃だ!!」
獪岳の血鬼術により、善逸の傷はヒビ割れ続けます。
戦いながら、善逸は昔の獪岳を思い出します。桑島から「獪岳を見習え!!」と言われたこと、「壱ノ型」が使えないと獪岳をバカにした隊員に腹を立てて殴ったこと。獪岳に嫌われているのが分かっていた善逸も、同じく獪岳を嫌っていました。それでも善逸は獪岳を尊敬していたのです。
「特別だったよアンタは
爺ちゃんや俺にとって特別で大切な人だったよ
だけどそれじゃ足りなかったんだな
どんな時もアンタからは不満の音がしてた
心の中の幸せを入れる箱に穴が空いてるんだ
どんどん幸せが零れていく
その穴に早く気づいて塞がなきゃ
満たされることはない」
善逸は心の中で爺ちゃんにあやまりながら、体勢を直します。
「ごめん 兄貴」
善逸が獪岳に放ったのは、独自に作り出した技「雷の呼吸 漆ノ型 火雷神(しちのかた ほのいかづちのかみ)」です。
「みっ…見えなかった!!
何だ!? 今の技
速すぎる」
獪岳は、何の技を食らったのかも分からないまま、頚を落とされました。
自分よりも劣っていた善逸に独自の型を編み出され、さらに負けるという事実に獪岳は頚だけになっても怒り狂います。しかし、善逸も自分と落下して死ぬと考えます。
そこに現れたのは、愈史郎(ゆしろう)です。
「人に与えない者は いずれ人から何も貰えなくなる
欲しがるばかりの奴は 結局 何も持ってないのと同じ
自分では何も 生み出せないから
独りで死ぬのは 惨めだな」
獪岳にそう言い放つと、愈史郎は善逸を助けて上に登りました。獪岳の最後の叫びは、誰にも届きませんでした。
獪岳についてまとめ
獪岳は善逸と並ぶ才能を持ち、悲鳴嶼や桑島といった大人たちに愛されても満たされませんでした。いつも自分が特別であり、周りは自分を一番に扱わなくてはならないという考えの持ち主です。
裏返せば、自分で自分が特別であると言い切れる自信はなく、誰かに肯定されていなければいてもたってもいられない性格だったのです。
しかし、愈史郎が言うように、求めるだけで他人に与えなかった獪岳は報いを受けました。いつも他人の評価を欲しがった獪岳が孤独に死んだのは皮肉なことです。
獪岳に関連するキャラクター
(マグミクス編集部)