『鬼滅の刃』サイコパスな上弦の弐・童磨 過去に出会った女性「琴葉」とは?
吾峠呼世晴先生による漫画(マンガ)『鬼滅の刃(きめつのやいば)』(ジャンプコミックス/集英社)に登場する、上弦の弐・童磨(どうま)について解説します。童磨が「サイコパス」と呼ばれる理由はなんなのでしょうか。※本記事は未アニメ化の重大なネタバレを含みます。
- ネタばれ注意
『鬼滅の刃』上弦の弐・童磨の「サイコパス」な性格
『鬼滅の刃』に登場するキャラクター、上弦の弐・童磨は美しい顔立ちで陽気な態度をとる男の鬼です。身長は187cmと高く、穏やかで優しい語り口調で、頭から血をかぶったような赤い模様があります。
上弦の陸が倒された際、鬼舞辻無惨によって全ての上弦の鬼が集められました。その際、なれなれしい態度で他の上弦の鬼に絡みます。上弦の参・猗窩座(あかざ)には、肩を組んで話しかけたことで怒りを買い、顔半分が砕けるほどの攻撃をされますが、「うーん、いい拳だ!」と返し、気にする素振りを見せません。一見すると、誰に対しても気さくで社交的な性格。しかし、本当の彼は何の感情も持たず、自己中心的で他人に共感することがない「サイコパス」といわれる性格です。
童磨が使う血鬼術は感情のなさを象徴するように、氷を用いた技です。冷気で肺を傷つけ、呼吸を阻害する技は、戦った鬼殺隊士を苦しめました。
また、童磨は人間のふりをして、「万世極楽教(ばんせいごくらくきょう)」の教祖をしています。悩みを聞いて信頼を得て信者を集め、その裏では人を喰っています。上弦の陸・堕姫(だき)と妓夫太郎(ぎゅうたろう)を鬼にしたのは、当時、上弦の陸であった童磨でした。
童磨の声優は宮野真守
2022年2月13日に放送されたTVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編最終話で、上弦の陸・堕姫と妓夫太郎の過去が描かれました。ふたりを鬼にしたのは、当時、上弦の陸だった童磨です。担当声優は宮野真守さんであることが明らかになりました。
童磨の過去
童磨は100年以上前に、新興宗教の教祖夫妻の息子として生まれました。髪の色は白橡(しろつるばみ・白茶色に近い色)。瞳の中に虹があり、親は童磨を神の声が聞こえる特別な子、神の子だと祭り上げました。信者たちは童磨を崇め、童磨に祈り、泣きながら悩みを打ち明けます。
童磨はにこやかにしながら、内心で親や信者を愚かだと見下していました。表面上は周りに合わせて神の声が聞こえるふりをし、信者の相談に涙を流して哀れんでみせました。実際には「極楽も神も存在しない」と思っていたのです。
可哀想に 極楽なんて存在しないんだよ 人間が妄想して創作したお伽話なんだよ
悲しい、寂しいという感情もなかった童磨。父親は色に狂い、信者の女性に次々と手を出していました。母親は半狂乱になり、父親をめった刺しにして殺害。自らも毒を飲んで亡くなりました。それを見ても、童磨には何の感情もわきません。
部屋を汚さないでほしいなぁとか あの頃はまだ鬼じゃなかったから 血の匂いが臭くて臭くて 早く換気しなきゃとか
そんなことばかり頭に浮かんで 悲しいとか寂しいとかほんの一瞬も感じなかった
そんな童磨は20歳で無惨に出会い、鬼になります。それに感動した童磨は「万世極楽教」の神を無惨に変えました。
童磨と琴葉
無限城での戦いで、伊之助から猪の被り物を奪って素顔を見た童磨。15年ほど前の記憶から、伊之助の母である、琴葉(ことは)を思い出します。
琴葉は、童磨いわく頭が良くなかったものの、美しく優しい女性でした。しかし夫や姑から暴力を受け、赤ん坊だった伊之助を連れて「万世極楽教」へ逃げてきました。
琴葉は心の美しさを童磨に気に入られ、喰われずに手元に置かれます。童磨は寿命が来るまで琴葉を生かしておくつもりでした。
ところが勘が良かった琴葉は、童磨が信者を食べる現場を目撃。幼い伊之助を連れて逃げ出します。しかし童磨に追い詰められ、琴葉は泣きながら伊之助の無事を願って崖から川へ落としました。
琴葉はそのまま童磨に殺されましたが、川に落ちた伊之助は助かり、猪に育てられることになります。
不幸だよねぇ琴葉 幸せな時ってあったのかな? 何の意味もない人生だった
童磨と琴葉、伊之助の奇跡とも言える巡り合わせ。童磨の言葉に、母のぬくもりを思い出した伊之助は激怒します。
謝意を述べるぜ思い出させてくれたこと ただ頸を斬るだけじゃ足りねぇ!!
テメェには地獄を見せてやる!!
童磨の最期
胡蝶しのぶと姉の仇・童磨の戦い
鬼舞辻無惨の本拠地、無限城で胡蝶しのぶは童磨の部屋にたどり着きます。しのぶは童磨を見て、亡き姉・カナエの言葉通りの容姿から仇だと見抜きます。
「私の姉を殺したのはお前だな? この羽織に見覚えはないか」
そうしのぶに問われて、童磨はカナエを殺したと認めます。
「優しくて可愛い子だったなあ 朝日が昇って喰べ損ねた子だよ 覚えてる ちゃんと喰べてあげたかっ…た」
激怒したしのぶに、童磨は片目を突き刺されます。しのぶが次々と繰り出す毒を受けた童磨でしたが、全て分解して回復してしまいます。
童磨は扇から、血を凍らせ霧状にした「粉凍り(こなごおり)」を撒いていました。しのぶはそれを吸い込んでしまい、肺胞が壊死し始めます。小柄で不利な上に肺を傷つけられ、劣勢に追い込まれるしのぶ。立ち上がれないほどの致命傷を受けながら、カナエの幻に奮い立たされ、しのぶは最後の力を振り絞って「蟲の呼吸 蜈蚣ノ舞 百足蛇腹(ごこうのまい ひゃくそくじゃばら)」を打ち込みます。しかしとどめは刺せず、栗花落カナヲが駆けつけるも、しのぶは力尽きて童磨に吸収されてしまいした。
栗花落カナヲが童磨をあおる
しのぶに代わり、童磨に対峙するカナヲ。カナヲは、猗窩座が倒されたことに涙する童磨を罵ります。
もう嘘ばっかり吐かなくていいから
貴方の口から出る言葉は全部 でまかせだってわかってる 悲しくなんてないんでしょ? 少しも
貴方のことを気の毒だと 死の間際にカナエさんが言っていた
貴方何も感じないんでしょ?
カナヲの言葉は童磨のコンプレックスを刺激します。
貴方 何のために生まれてきたの?
童磨に対して善戦するカナヲですが、広範囲を攻撃する血鬼術「寒烈の白姫(かんれつのしらひめ)」「冬ざれ氷柱(ふゆざれつらら)」に阻まれて近寄れません。さらに刀を奪われ、絶体絶命の危機に陥ります。
その時、天井を突き破って伊之助が登場。伊之助にとって童磨は、しのぶだけでなく、母・琴葉の仇であると明らかになります。伊之助とカナヲの攻撃に対し、童磨は血鬼術「結晶ノ御子(けっしょうのみこ)」で自身と同じ能力を持つ小さな氷の人形を作り、その場を立ち去ろうとします。しかし、体に異変が現れます。
吸収したしのぶの体に染みこんだ毒が効いてきたのです。しのぶは自分が喰われると分かっていて、藤の花の毒を飲んでいました。毒の量はしのぶの体重分、致死量のおよそ700倍。カナヲが童磨をあおったのも時間稼ぎのためでした。
溶けていく童磨は追いすがるカナヲと伊之助を「血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩(むひょう・すいれんぼさつ)」で抑えようとします。
巨大な氷の菩薩像に苦しめられるカナヲは、失明の危険をいとわず「花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼(ついのかた ひがんしゅがん)」を発動。動体視力を極限まで上げて童磨の頚を斬ります。しかし、凍らされて刀の動きが止められかけますが、伊之助が投げた刀で刃が押し込まれます。ついに童磨の頸は落とされました。
「とっととくたばれ」
童磨は死の間際にあっても、何の感慨も抱くことができません。やはり自分にはなんの感情もないのか、と考えた時、闇の中で吸収したしのぶと再会します。
「あ やっと死にました? 良かった
これで私も安心して成仏できます」
自分を殺されるきっかけとなったしのぶを見て、童磨はいままで知らなかった感情を覚えます。
「今はもう無い心臓が 脈打つような気さえする これが恋というやつかなぁ 可愛いね しのぶちゃん」
さらに童磨は続けます。
「ねぇしのぶちゃん ねぇ 俺と一緒に地獄へ行かない?」
しのぶは最高の笑顔で答えました。
「とっととくたばれ糞野郎」
砕け散った童磨は、伊之助に何度も踏みつけられました。
童磨の目覚めた心と救われない性根
童磨は名前に子供を示す「童」が入っているように、子供じみた自己中心さと他人に共感できない性格を持っています。能力と頭脳に秀でていても、炎柱・煉獄杏寿郎のように他人のために使おうとは考えたこともないでしょう。
伊之助の母・琴葉を暴力をふるう家族から助けたように、教祖という立場と才能を使えば人の役に立てたはずです。
童磨は最後に人間らしさに目覚めました。自分を殺したしのぶに敬意からか、感動し恋をしたのです。しかし、せっかく目覚めた人間らしさから出た言葉さえ、「一緒に地獄に行こう」とどこまでも自分優先でした。しのぶに「くたばれ」と言われたのは、まさに自業自得と言えるでしょう。
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記
(マグミクス編集部)